以前にもましてバンドソーをバリバリ使うようになったので、以前から気になりつつも放置しておいた点を再チェック。
最初はホイールのアラインメント。1mのスケールをローワー・ホイールの
なるべく中心近くに当て、アッパー・ホイールの位置関係を見てみました。
(註)ローワー・ホイールを基準にする
アッパー・ホイールとスケールが平行になるよう
角度(トラッキング・ノブ)を調節すると
何ということでしょう!
下右画像のように約3ミリの隙間があいているのです。
これは下図の(C)に該当します。
このBS-10Kは強化ギプスを装着して相当堅固に
なっていますがいますが、かなり使用してから改造したので、
買ったときからそうなっていたのか、ブレード・テンションの
ためにボディが永久変形したかは不明です。
しかしもともとボディの剛性がないので、どの個体でも十分起こりうる事です。
それでは強引に揃えてしまえ、とアッパー・ホイールの回転軸にワッシャーをかませてみました。
レンチを木槌で少しずつ叩いてナットをゆるめ、中心穴を旋盤で15ミリに広げたワッシャーをはさみ、上と下のホイールのリムが同一平面になっている事を確認しました(図のAの状態)。
トラッキング・ノブに触らずにブレード(6mm)を
装着して廻してみると、トラッキングは下画像のように
やや前よりですが、回転に問題は無さそうです。
次にトラッキング・ノブを廻してブレードが
アッパー・ホイールの中心になるよう調節すると
(センター・トラッキング)騒音が大きくなるのです。
他にも大変重要な事に気づきました。
ブレードの前面(歯面)にスコヤを当ててみると
最初はテーブルに対して直角であったものが、
センター・トラッキングにするとブレードが後ろに
そっくり返ってしまいます。わずかとはいえホゾ
加工等では問題です。
不勉強でどんな幅のブレードでもセンター・トラッキング、とバカの一つ覚えのように考えていましたが、複合汚染!?を目の当たりにすると、何を根拠にしたらいいのか迷ってしまいます。また1/2インチなどのブレードでは意味がないようです。
もう一点、ブレードのテンションも摩訶不思議な世界ですが、ガイド・ブロック、スラストベアリングは完全に外した状態である程度のテンションをかけておいて回転させ、テンション調整ノブをゆっくり廻してみます。多分最初は張った糸を弾いた際の様にブレードが振動します。ゆっくりと廻していくうちに振動が減少してほとんどなくなり、さらにテンションを強くしていくと再び振動するようになります。
いろいろセッティング方法はあるようですが、真ん中の振動がなくなったところで使用するのが多分いちばん簡単な調整方法と思われます。この状態はアサリ(切しろ)も最小のはずです。
バンドソーのテンション目盛りはセッティングを覚えるため以外は全く用をなしません。またブレードの材質、長さ、厚み、ホイールのサイズ・・・ 不確定要素はいっぱいあるのですが、振動するからといってあらぬ所を補強してみたり、ガイド・ブロックで押さえ込んだり、そもそも基本的な調整を放置したままではいい結果は得られないばかりか、事をいっそう複雑にしてしまうように思えます。
(続く)
世の中に参考図書はいっぱいあるので、BS-10K固有の問題だけを考えます。
リソー用のブレードは、歯のピッチが粗く、アサリが大きい方がダストの排出も良く効率的に切断できます。又ブレードの幅が広い方が直進性も良くなります。一般論ではそうですが、ことBS-10Kで考えるとどうでしょうか?
ブレードはループになっていますから
ホイールとホイールの間では外側にふくらもうとします。
6ミリのブレードにテンションをかけて左図(A)のように
ブレードがほぼ垂直になったものとします。
幅広ブレードに同じテンションをかけると(B)のように
ブレードは外側に膨らみます。このようなテンション不足の
状態では切り口が樽型になってしまいます。
これはブレードの肉厚が増すほど顕著になります。
ではどんどんテンションを強くしていったら?
ブレードは直線に近づいてはいきますが、BS-10Kの
コラムの剛性はそれほど期待できません。
かなりテンションを強くしたつもりでも
細いブレードと比較して、幅広のブレードはまだ
外側に膨らんでいて、右側のガイド・ブロックの
ホルダーにぶつからんばかりにスレスレです。
つまりまだブレードは直線になりきっていないのです。
強化ギプスを装着したBS-10Kでさえこの状態ですから
何もしていない固体では、いくらテンションを強くしようと
しても、ヘッドがうなだれるだけ?
ヘッドがうなだれれば当然テーブルとの直角も
狂ってきます。
ストレスがかかると、そのストレスを軽減しようと
ネックは独特の動きをするようになります。
補強前のネックは左図のように上下、左右が
複合された8の字運動をしていました。
ストレスの状況によって、前後、左右、上下
様々な動き(振動、ゆれ)をしますが、
この状態では切しろは大きくなり、切削面は
荒れてしまいます。当然振動、騒音も大きくなります。
ブレードの形状以外にもホイールの回転軸のねじれ、
ブレードの接合部のまずさ、その部分の固さ
(接合部以外と比較して)、切断の際ブレードに
かかる負荷、台の剛性と安定性・・・
さらに悪くなる原因は枚挙に暇がありません(笑)
BS-10Kは幅広ブレードを使えようには
作られていない? きっと開発者も驚いて
いることでしょう。
これまた片棒担ぐつもりは毛頭ありませんが、ティンバー・ウルフのブレードは比較的ロー・テンションで使用するように設計されています。
アサリが大きければよく切れるのは当たり前で、違うアプローチから切断性を向上させたブレードもあるようなので、試してみたいと思います。
アマチュアですから目的が達成されれば何でも許されるようですが、幅広、肉厚は実はBS-10Kにとっては辛いブレードだったのです・・・
左はBS-10Kに付属していたメタル・ガイド・ブロックです。ブレードとこすれる際の騒音、フレードの側面の磨耗、切断中のストレスでプレートが曲がって刃先が当ってしまうと刃を痛めるなどの理由からお払い箱にしました。
当時Lawrence L'Hote氏のホームページで木で作ったガイド・ブロックが紹介されており早速作ってみました。氏が作製したのはクール・ブロックを使用していて磨耗が激しく使いきれないという理由でしたが、こちらとしてはベアリング・ガイドにしたくても販売されていなかったのでやむを得ず、というのが動機でした(笑)
氏はメープルで作製され、その他アッシュ、オークなどの固い材料がいいのではと書かれていましたが、手持ちのサペリの端材で作りました。セッティングは下右のようになりますが、ここからいくつかのチェックポイントが浮かび上がってきます。
@ガイド・ブロックの端面は正確に直角である事、磨耗したら先端を切り捨てて修正するか、新たに作る
Aブレードの刃先とガイド・ブロックの位置は画像のように、しかし3ミリなど細いプレードの場合は狭くて事実上サポートが難しく、また刃先が当って削り取られてしまうなどの問題が残ります。
BBS-10Kのガイド・ブロックは約9ミリ角です。これで倍近い幅のブレードをうまくガイド出来るのか?
磨耗の問題はベアリング・ガイドにすることで解決します。またトラッキング性も向上しますが、どこに問い合わせても市販品は無かったので自作しました。この時点では旋盤、フライスなどは無かったので金鋸、ヤスリなどの手工具で、仕上がりはきれいではありません(笑)。ベアリングは2段重ねして幅広に対応できるようにしました(3段も可)。ブレードの継ぎ目、曲がり癖などに対してはガイド・ブロックより効果があるようで、まなさんもこのガイドを作製されて現役です。
3ミリ以下の細いブレードが使用できるとカーブのいろいろな切断パターンに対応できますが、市販品のカーターにはBS-10K用の製品はありません。で、関西の金属加工屋さんに依頼してステンレスで精密溝付リングを作ってもらい、ベアリングを2個圧入しています。溝の深さは1.5ミリで、ブレードをしっかりサポートするので抜群の効果がありました(市販の溝付ベアリングは溝深さが不足して駄目)。
上側のブレード・ガイドはなるべく切断する材料に近くセッティングするようにしないと、切断の際のストレスでブレードの曲がりなどの影響を受けやすくなります・
また先のトラッキングの話で出てきたように、ブレードの幅、テンション、トラッキングなどでテーブルとの直角(前後、左右とも)は狂ってくるので、正確を期する必要があるときはセッティングを変えるたびに確認、調整する必要があるようです。
(続く)
註:一部以前の画像を使用しています。スラスト・ベアリングは側面を使用するものが多いのですが、ベアリングの円周部分の方がいいのでは? については後日。
本邦初公開? ホイールを横から見た画像です。確かに中央が膨らんだクラウン形状になっていて、タイヤの両端のわずかな突起を落としこむ溝があります。おととし、新品のタイヤを初めて見たときはバリだ?と思ったのですが、古いものをホイールから外してみると意味があることが分かりました(笑)
多量のダストがこびりついて取れなかったり、重切断の際のブレードの熱で変色したり段差がついてしまっているものは、取り替えることでトラッキングの改善、騒音・振動が減少します(ジーというかジャーというか、高い音域のブレードの騒音、他の原因による騒音・振動がある場合はあんまり改善されたと感じにくいでしょうが・・・)。
ホイール・タイヤに油脂分が付着するとスリップや回転むらの原因となりますし、ダストがこびりつく一因になります。こびりついてしまう前に、使用後はこまめに乾いた布などで払い落とした方がいいようです。勿論内部にダストが飛散・付着しないよう必要な集塵も欠かすことが出来ません。
最近はデジタル・テンションゲージがありますが、
これはアナログ式。
プレードにテンションをかけない状態で装着し、
スケールをゼロにセットします。
下側のブレード・クリップ部分が伸びにつれ動いて
その変化量から専用のダイアルゲージで張力を
直読できます。単位は読み×1000PSI。
下画像はテンションを強くしたいった際の
BS-10Kのインジケーターとブレードの張力。
装着しているのはOlsonの1/4インチのブレードで、BS-10Kのインジケーターの動きはブレードテンションにほぼ比例して変化している事は分かるが、ブレードの周長、幅が変わればインジケーターとブレードの張力の関係は異なってくるので、違うブレードの場合の参考にはならない。推奨テンション不明のブレードの場合はこれがあってもどうにもならない(笑)
(註)たまにテンション・ノブを緩めていっても指示が変化しない事がありました。BS-10Kのアッパーホイールのホルダのボディにあたる突起部がスムースに滑らず引っかかったような状態になっていたためで、ノブをプラ・ハンマなどで軽く叩いて動かしました。
10インチのデルタ製バンドソーをお使いの和樽さんから、次のようなご指摘がありました。
気になって私のDELTAも調べてみましたが、状況は全く同じでした。となると、これは「そのように作ってある」と考えるべきではないでしょうか。以
下は全くの推測ですが、バンドソーは構造上ブレードにテンションを掛けるとどうしても上プーリーが手前に倒れこむようになります。(中略)。
ブレードが斜面を登っていく(つまりは後ろ方向へ移動する)ことを見越して、あらかじめ上プーリーを下プーリーより少し後ろ側に取り付けてあり・・・
希望的には機械は堅固で不変のものである!と願いたいところですが(笑)、MINIMAXの16/20インチのバンドソーのマニュアルにも次のように説明されていました。
(前略) 1-1/2インチのブレードを装着した際に上下のホイールがコープレナになるよう設計されている。細いブレードではコーブレナにならないが、ブレードの刃先面がテーブルと直角であれば問題ない(後略)
どうもバンドソーはのっぽ形状で、ブレード・テンションにより
ヘッドがFig.6の(A)の矢印のように前面に傾く事をみこして
作られているようです。
一方Wood21さんには大型のコンターで同じ確認を
していただく事が出来ましたが、鋳造の堅固なボディ、
それと比較してあまりテンションがかからない細めの
ブレードで、最初からコープレナに調整されているような
感じがしました。
和樽さん、Wood21さん、そしていろいろ情報をお知らせ
いただいたForestさん、KAZU@あきたさん有難うございました。
ではこれは何でもセンター・トラッキングにすればいい、
ということにはならないと思われます。図の(B)のように
大きくアラインメントがずれた状態で幅広ブレードを
無理にセンター・トラッキングにすると、フレードは端の
部分だけがタイヤにかかって回転するようになります。
これは直角、ブレード、タイヤ、回転むら、騒音など
全ての面で好ましくない状態と思われます。
こうしたことからある方向が示唆されます。
上下のホイールのコープレナは、その機種に
想定された一番幅が広いブレードに規定の
テンションをかけた状態で調整する
上のMINIMAXのバンドソーではローワー・ホイールの軸にネジが切られており、前後させて調整が出来るようですが、BS-10Kにはそんなしゃれた?機能はありませんので、アッパー・ホイールの軸にワッシャーをかませて調整するぐらいしか方法はありません。(但し自作出来る可能性はありますね・・・)
BS-10Kにとってホイールがコーブレナになる
16ミリのあるブレードの場合の検証です。テンションはギリギリ近く強くしています。
補強のおかげか、はたまたアッパー・ホイールの軸ににワッシャー2枚をはさんだおかげか、かろうじてほぼコープレナ状態ですが、ブレードは画像のように前寄りのトラッキングです。そして
上下のホイールの接線でスケールがブレードの中心になるようクランブで固定してブレードの真ん中あたりを見ると、案の定中央画像のように1ミリ前後ブレードが外に膨らんでいるのが分かります。ガイド・ブロックで幾分は押さえ込んでも、切しろはこの分大きくなると思いますし、切り口も直線にはならないのでは? またガイド・ブロックも磨耗が激しくなると想定されます。このふくらみはホイール径が大きいほど緩和されると思います。
大変不思議だったのはテンション・メーターの指示がほとんど変化しなかった事です。ブレードを横から押した時の遊びは3〜4ミリ程度ですがまだまだテンションが足りないのか? といっても、これ以上はBS-10Kが可哀想(笑) あるいはブレード材質(高張力鋼)?
もう一点不都合がありました。手でホイールを廻してどこで止めてもそのまま停止しないといけないのですが、手を離すと勝手に回転してしまう箇所がありました。当然回転むら、振動が起きます。これはブレードの接合のまずさで厚みの不揃い、ブレードの他の部分と比較して固い事が原因です。
KAZU@あきたさんから、あるところでは高周波ウェルダーで接合しなおし、焼きなまししたらスムースになったという情報をいただきました。
また60Hz運転で1m離れたところの騒音も約82dBと大きく、テンショナーを取り払った後は70数dBですので、こうした事が原因になっていると考えられます。どちらかというとリソーというより丸太挽き(ランバー・ミル)・・・・
次はTimerWolf 1/2"ブレードの場合です。
テンション・インジケーターは画像の位置で、シリコン・スチールの場合テンションは他の半分程度でいいということですから。(もうちょっとテンションをかけたほうがいいのか? Leevalleytools、Woodcraftのテクニカルサービスに問い合わせると普通 15000〜25000(30000)PSI程度のテンションという回答でした。現実的にはブレードの振動を見ながら・・・)
これに合わせて調整した積もりはありませんが、コプレナはばっちり、ブレードの位置もほぼ中央、ブレードのガイド・ブロックを外した状態で外側へのふくらみもほとんどありませんし、何もしなくてもブレードは直線状態で変な振動はありませんし、さらに騒音値も約76dBに低下し、回転機械特有のグォーンというものが主成分で回転むら、ゆれ、振動による耳障りなノイズがかなり少なくなっています。
TimerWolfのブレードの切れ味の評価は悪い訳ではないので、リソーにクオリティが必用ならこちらの方に軍配が上がりそうですが、切しろが大きく、荒れても、はたまた騒音がうるさくても早く切れたほうがいいという場合もあるでしょうから、お好みの選択次第!?
もう一種類競合ブレードがありもうすぐ届くと思いますので、それとの比較が楽しみです。
(註) これはハンドソーのテンションローラーを取り外してボディを補強し、三相モーターをボディとは離してマウントし60Hz運転、そしてアッパー・ホイールの軸にワッシャーを2枚かませた状態でのテストです。ブレードはそこそこ使用しているのでテストカットは行わず、実態の検証のみ。ホイール・タイヤはテストのため新品に交換しました。
ここではSufforkmachinary、Olson、Vikingなどのブレードを販売していますが、いずれもブレード・メーカーでは推奨テンションを公表していない、一般的には15000〜25000(30000)PSIという回答でした。テンションの調整は徐々に強くしていって、振動が止まるヌル・ポイントが最適テンションという点も同じ。
一方からはもうちょっと突っ込んだ説明が。
ブレードメーカーのマニュアルには、バンドソー・メーカーが推奨するテンションが最適値であると書かれている。
これでは卵が先か、鶏が先か状態で、訳がわからなくなります。もしかしたらバンドソーがコープレナ状態になるテンションは確かにバンドソーにとっては最適値になると思いますが・・・ バンドソーの推奨テンションなるものにこれまでお目にかかったことはありません。
テンションはきっかりいくついくつというものではなくアローアンスがありますから、その範囲内でバンドソーが安定して動作する、という風に考えれば
現実的なテンション調整は
Viking
Sufforkmachinary
最後にMINIMAXのバンドソーのローワー・ホイールの軸受けには画像のようなチルト/前後調整がついていました。
Highland Hardwareのリソー用ブレード 「Wood Slicer」が届きました。価格は$29.95。下上画像のように1本ずつ丁寧にラップされています。中央はブレードチップの拡大画像で、インチ当り3/4歯のバリアブル・ピッチになっていて、アサリを大きくすることなくダストが効率よく排出されます。
全体も滑らかですが、ブレードの接合部も下画像のように厚み、表面仕上げ、チップの並びすべてがきれいに仕上げてあり、「そこだけと・く・に・硬いのーー♪!? (キャンディーズの春一番のメロで) 笑 」なんてことはありません。
下画像はブレードの振動が最小になるようテンションを調整後の状態。
ホイール・アラインメント(コプレナー)、タイヤ上のブレード位置、ブレードのふくらみとも特に問題なく、騒音値も約76dBでTimber
Wolfと同じです(これはBS-10Kそのものの固有値?)
昨年、アメリカの雑誌でのテスト・レポートによればTimber Wolfを抜いてベスト・チョイスに選ばれていました。切れ味などは材料によって全然異なり、また多分に主観が入ってしまうものらしいですから掲載しませんが、私的にはいい結果でした。ご質問がありましたらメールでお問い合わせください。
最後に各プレード厚みの測定結果(単位はmm、多少誤差あり)。 下左はWood Slicer、下右はTimber wolf。
続いて左はLENOXのバリ・ピッチ金属用のバイメタル・ブレード、右は16mmブレード
先日手に入れた52mm厚のブナ板を角材に製材しました。右画像はWood Slicerの挽き肌のクローズアップです。
以上 2005 July