春の穏やかな土曜日、道すがらあちこちで満開の桜を見ながら、湘南にお住まいのKEN_BOHさんの工房にお邪魔しました。母屋とは別棟の工房にデン構えていたのは皆さんよくご存知のBT-3K、今回の一番の目的はDelta AP-400の測定をさせていただく事ですから、横目で見ながら準備を開始、今回も厚手塩ビシートを持参しましたが、空気の乱れの影響を少なくするよう長さを550ミリにしています。
また風量と静圧を同時に測定できるよう穴を二つ開け、パイプの先端にはお借りしたブラスト・ゲートを取り付けました。
まずはブラスト・ケートを閉じて最大静圧の測定からです。結果は MaxSP=1.00KPaでした。続いてゲートを開放すると、風速=21.4m/sで 風量=10.0m3/min(359CFM)となり、いずれもKkappaさんの所と変わりませんので、測定のばらつきは無いと見ていいようです。
ブラスト・ゲートを徐々に閉じていくと、風量とパイプ内の静圧の関係は
風量 21.4m/s(10m3/min、359CFM) 静圧 0.55Kpa
15.9m/s(7.5m3/min、268CFM) 0.8KPa
15.5m/s(7.3m3/min、262CFM) 0.9KPa
のように変化しました。一番上の測定値からは、高々55センチの100φパイプで 1.00-0.55=0.45KPa 程度の圧力ロスが生じています。ホース/パイプの切りっぱなしも意外と圧力ロスがあるのをご存知でしたか?
また変化からは、その風量を得るためには、接続されるダクト等の総圧力損失を、その静圧以内に押さえなければいけないと考えられます。が、実際に接続してみると
100φホース 0.4m + 100->60φ異径変換 + 90°エルボ
+ 60φパイプ 0.91mで
風速 7.7m(3.6m3/min、130CFM)
100φホース 計1.9m + 90°エルボ + 580JP ダストフードで
風速 10.7m(5.0m3/min、180CFM)
と厳しく、想像以上に総圧力損失は大きいようです。
ちょっと考え込んでしまったのですが、いろいろな損失の要因に
ついては今後ゆっくり考える事として、うわさのBT-3Kをじっくり
拝見させていただきました。
左の画像はBT-3Kで切断中のKEN_BOHさんです。しっかりした専用台
に置かれ、快適に作業が出来ますね。ダストの処理もやりやすそうです。
詳しくはKEN_BOHさんのHPをご覧下さい。
BT-3Kもいろいろな工夫がこらされていてほんとにハイ・コスト
・パフォーマンスな感じがしました。
スライド・テーブルは作業の安全上にもとても有効ですし、テーブル下部分に
ブレードにフードのようなものがあり、集塵機無しでも殆どのダストが
処理できるのはなかなかです。
工房があると、多少は周囲への電動工具の騒音を考慮しなくては
ならないにしても、落ち着いてじっくりと作品作りに取り組むことが出来るなあ!
との思いを深くしました。
KEN_BOHさん、お忙しいところを時間を割いていただき、ありがとう
ございました。
2004 April
サイクロンを製作されたkkappaさんの工房にお邪魔して、集塵システムを測定させていただきました。kkappaさんはDelta
AP-400をブロアとして使用したサイクロン・システムを製作されています。工房は母屋に外側に拡張される形で自作されていて、ゆったりと木工を楽しめるうらやましい環境です。早速目に飛び込んできたのは自作のサイクロン集塵機、ドラムは萌黄色に塗装され、工房が明るく感じられます。ダスト缶はファイバードラムで、これもまたすっきりした感じでした。
大変お手数をおかけして申し訳なかったのですが、測定のためいったんブロアの接続をバラバラにして頂きました。画像中、右はAP-400のブロア部の拡大です。ブロアのアウトレットとダストの遠心分離用のドラムが一体となった巧妙な構造、ブロアはプレートファンのようです。
AP-400のカタログでは最大風量は650CFM、最大静圧は8.2WC(Water Column in
inches)となっていますが、これをメートル法に換算するとそれぞれ
カタログ風量 Q = 650CFM = 17.6m3/min
カタログ最大静圧 P = 8.2WC = 208mmAq = 2.08KPa
です。
まずブロアのインレットに厚手の透明塩ビシートを丸めた100Φ約40cmのパイプを接続、これならば中の様子が見えますし、パイプと違って広げてしまえば持ち運びにかさばりません。ダストバッグは取り去った裸の状態では
最大静圧 MaxSP = 1.01KPa = 4.0WC
風速 U
= 21.1m/s
風量 Q = 9.92m3/min 356CFM
次に上下の集塵バッグを取り付けると
風速 U
= 26.2m/s
風量 Q = 12.3m3/min 442CFM
でした。集塵バッグを取り付けたほうが風速/風量が増しているのは、アウトレットの構造が特異で、集塵バッグがダクトの役目を果たして排気部分での流れの乱れが無くなるためか、あるいはブロアによっては多少損失があった方が風量が増す特性曲線(後日取り上げる予定)のものもあるようですが、はっきりした原因は不明です。
一方、いずれにせよ最大静圧、風量ともカタログ値とかなり違う点がちょっと気になります。一つの原因は電源周波数が考えられます。アメリカの機械は 110V/60Hz用ですが、特に誘導モーターではこの電源周波数の影響は大きく、国産プレート・ファンのカタログを見ると、50/60Hzで回転数で
2800/3400rpm、風量/最大静圧は50Hzでは60Hzより15%前後低下するようです。
同時に騒音も低下しますが・・・
もう一点はカタログのスペックの根拠です。あえてこの点を取り上げるのは、JETのカタログでは650CFM@4"のように、実際に4"の
ダクトを接続した際の値として表示されているのに対して、他のメーカーではどんな状態での性能かはっきりしません。ブロアの専門メーカーと違い、特性曲線も公表されていませんので、集塵システムとして利用する場合はデータが不足すると思います。ブロアのイン/アウトにダクトを接続すれば単体の場
合と比較して一般的に風量は減少します。
次は自作サイクロンを接続しての測定です。
最大静圧 MaxSP = 0.86KPa = 3.39WC
測定中のKkappaさん。
風速センサーの位置はダクト開口から約30cmぐらい。
既にかなりの配管をされていたので、変則ですがダクト先端部での測定です。最初の画像のようにサイクロンのインレットから@まずY分岐され、一方はそのまま水平に伸び、90°エルボで水平に曲がって約1mのパイプが接続されています(上の画像)。他方AはY分岐のあと下に降りて分岐ボックスで100/75Φのブラ
ストゲートがあります。配管の長さは各部を合計したものです。
@系統
Y分岐+100Φ2.5m+90°エルボ×1 14.0m/s 6.6m3/min(236CFM)
Y分岐+100Φ3.0m+90°エルボ×2
+リデューサー+75Φ2m 7.2m/s 3.4m3/min(121CFM)
A系統
Y分岐+100Φ1.5m+90°エルボ×1 15.3m/s 7.2m3/min(258CFM)
Y分岐+100Φ1.5m+90°エルボ×1
+分岐ボックス 11.4m/s
5.4m3/min(192CFM)
本当は測定はダクトの開口から直径の5倍程度以上離さないと気流の乱れの影響を受けるようです。パイプ内で十分均一に整流されていないので、風速センサーをダクトに直角にセットするより、やや斜め前向きにしたほうが数値が大きめでしたので精度は若干低下していると思います。この結果をみると、かなり配管の影響が出ているように感じられました。またホース口径を小さくした場合や、分岐ボックスで接続するホース同士の中心線が一致していないとロスが大きいようでした。
A系統から自動カンナ(メーカー・オプションのダストフード)に接続した状態では
Y分岐+100Φ2.0m+90°エルボ×1
+リデューサー+75Φ2.0m+メーカー製フード 8.0m/s 3.8m3/min(135CFM)
となりました。ダストの垂直部分の吸い上げは問題無いようでしたが、切削終わりに
少しダストが飛び散るようです。
全てでダストの分離はごきげんでした。
私のサイクロンのブロアは0.4KW(1/2HP)ですので、1HPのAP-400を使用したkkappaさんのシステムの方が風圧、風量共に大きいのですが、システム全体としてはややロスが大きいかなという印象でした。まだ機械には仮接続ですし、全てに接続されていませんので、これから整備されて能力が向上するのでないかと思います。
最後に奥様にはお昼を用意していただいたりご好意に甘えさせていただき、改めてお礼申し上げます。あ、それからひときわ輝く木工旋盤で加工体験をさせていただきましたが、「いい機械はいい!」ということを改めて実感しました。旋盤、面白そうですね! kkappaさん、有難うございました。
2004 March
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