聞きかじり・サイクロン・ノート     戻る


 サイクロンに関するメモです。中で”?”がついている項目は聞きかじり、受け売りなどです(笑)。


 サイクロン集塵機で苦労される点は、主としてブロアの能力に起因するものが多いようです。
 あるブロアで設計されたものをそのまま製作しても、もし実際に使用するブロアの能力、風量や風圧が半分であればサイクロン内部の風速も大きく減少し、ダストの分離能力も大幅に低下してしまいます。極端なサイズやアレンジで製作しない限り、ブロアの能力で殆ど結果は決まってしまうと言ってもいいくらいです。
 あちらでは1HP以下のブロアを使用した市販品は見かけないようですし、中には5HP等という強力なブロアを使用しています。しかし国内でブロアの価格を見ると、単相100Vのブロアは1HP程度しかなく、また2HPともなると三相になってしまいますし、実売価格も6万以上で、それなら市販の強力な集塵機が買えてしまいます。
 
 家庭用掃除機、ジャンクのブロアなどで自分サイズのサイクロンに挑戦する事は興味深いと思いますし、前段セパレーターが目的でも、実用性は十分あると思います。


まなさんのコメント

 マルチサイクロンは流速をあげて最小分離径を小さくするために使います。圧損を軽減する為に径の小さいサイクロンを複数パラレルに接続することによりそれを実現するわけです。
 設計は結構難しいけど、面白いものですぞ。


(註)マルチサイクロンは、サイクロンを並列に並べたもの。焼却炉から発生するガスや化学物質の蒸気、金属蒸発粒子(ミクロン以下の微粒子)等を分離、回収するためなどに使われているようです。



サイクロンの更なる進化に挑戦したい方には
・ヴォルテックス社のサイクロン装置「スピントップ」
・特許庁の出願資料
等は宝の山ですよ(大爆笑)・・・

1.サイクロン・ダスト・セパレーター

風速Vで、半径rの円周運動をしている質量mの物体は遠心力Fを受けます。

F=m×V÷r


サイクロン・ダスト・コレクターは、吸い込んだダストがこの遠心力で円筒の壁にぶつかり、摩擦によって徐々にスピードを失い、円筒壁を落ちていく事によってダストを分離します。
上の式より、ダストの速度(風速)が速いほど、また回転半径が小さいほど遠心力/摩擦は強くなります。
一方同じスピードで廻る大小のダストの粒子を考えてみると、大きなダストほど遠心力が強く、分離されやすいことが分かります。
もし粒子Aが1g、粒子Bが0.1gとすると、粒子Bが同じ遠心力を受けるためには粒子Aより√10倍=約3.2倍の風速が必要です。

(ノート)
・集塵効率を上げるには風速が肝心。
・より細かい粒子を分離するためには、十分な風速が必要。
・風速20m/s程度で設計される事が多い?

・同じ風速でも、円筒の径が小さい方が遠心力が大きく分離されやすい。圧力損失は増加する。
・風速を低下させないよう、円筒の内部は平滑である必要がある。
・質量は同じでも比重の小さい物体=体積が大きくなり受風面積大、は摩擦より風の力が勝り、セパレートしにくい。
・円筒部の長さはある程度必要、これはダストを渦流で何回も回転させた方が累積摩擦が大きくなるため?

 円筒内部で遠心力による摩擦で速度が低下したダストは、コーン部でさらに減速し、落下していく。

(ヒント)
・コーンの長さが円筒直径の3倍の時が最もダスト・セパレーションの効率がよく、圧力損失が少ない?
・全体の丈が大きくなりすぎる時は、1.6倍程度が次善?

・コーン部を持たない、いわゆるドロップ・ボックスは集塵効率が悪く、細かいダストは分離できない。


2.インレット

(ノート)
・インレットの断面積を小さくすると円筒への流入スピードが大きくなり、風速が増加する。但しこの事によりシステム全体の圧力損失は増加する。
・インレットは円筒の外周に沿って切り離しにすると、回転中の流れと、新たに流入する流れがぶつかり、圧力損失が増加する。ナチュラル・ベーンタイプ(下図のB)にして両者を分離するとロスを低減できる。またエア・ランプを設けることでさらにロスは減少する。


・インレットの断面形状は丸型より角型の方が圧力損失が少ない。
・インレットに少し下向き角度をつけると自然な下降気流を作りやすい?


3.アウトレット

(ノート)
・アウトレットの径は大きいほど圧力損失が少ない。
・下降気流が向きを変え、アウトレットに吸い込まれるヌル・ポイントがある。アウトレットの長さがこれより長くても短くてもセパレーションが悪くなる?

・ヌル・ポイントの位置は内部の風速と関係があり?、計算式では示されていないようである? ご存知の方、教えてください!
・内筒の長さは、円筒の高さの2/3〜3/4程度をよく見かける?

ヌルポイントについて説明不足で誤解があるようですので捕捉します。
アウトレットの入り口では気流の向きが反転するのでダストが集まりますが、この集まったダストをスムーズにコーン部分に引渡し、(回転半径が小さくなると遠心力/摩擦力は増加するので、)コーンの下に落ちるにしたがってどんどん減速し分離される、まさにそのうまく受け渡しできる場所をヌルポイントというようです。
長すぎればコーンでせっかく減速中のダストを吸い出すポンプになってしまうし、短すぎるとまだ外筒の壁に押し付けられていないダストを吸い込んでしまう。。
動作は外筒、内筒などのサイズ、風速などが複雑に相関しているので、あるサイズ/ブロアでうまくいったからといって、全てには当てはまらないと思います。ただし、上の動作から、コーン上端の少し上辺りだろうということは想像できます。実例で内筒の長さは外筒の長さの2/3〜3/4程度というのも理屈がつくようです。ただしあまり神経質に言われていないところを見ると、外筒/内筒の径、外筒/コーンの長さ、インレットの断面積ほどシビアではない???

ダストの吹き出しは風速/風量、外筒の高さの方がはるかに影響が大と思います。


4.フィルター

(ノート)
・非常によく設計されたものは、大きなダストはほぼ100%近く集塵できるのに対して、人体に有害な非常に細かいダストは補足率は95%程度まで。エアクリーナー、排気扇、マスクなどを併用する。特にサンダーの粉塵。

・工具に付属しているフィルター(バッグ)程度では数ミクロン以下のダストは通り抜け、集塵機の排気に混じって室内に撒き散らかされる。


5.その他

集塵シミュレーションに入れたほうが良かったかも知れませんが・・・

(ノート)
・ドラム、コーンは金属製にし、アースを取るのがベター。
・気密度が悪いと圧力損失が増加する。
・よく設計されたサイクロンでも600Pa〜1.5KPa程度の圧力損失があり、設計によっては圧力損失がこの何倍にもなるので、余裕のあるブロアを使用するほうが良い。おおよそで

 ・32〜38φホース、2〜3m3/min程度の風量・・・・吸込仕事率500W程度のホームクリーナー
 ・100φ、8m3/min(290CFM)程度の風量・・・1HP以上のブロア
 ・100φ、11m3/min(400CFM)以上の風量・・・1HP以上のターボファン、または1.5HP以上のプレートファン
 
・安定した状態では問題なくダスト分離していても、ダクトがふさがったり大きな圧力変化があるとアウトレットからダストを吹き出したりするので、その対策用にもフィルターを考えておいた方が良い。

・風量に見合った工具の集塵用と考える。万能ではない。

風量が少ないと工具が周囲に撒き散らす細かいダストを広範囲にわたって捕捉できない。
大きなダストを問題なく収集できるからといって、非常に細かいダストを吸塵できているかどうか?
 ダスト・バッグがきれいといっても、非常に細かいダストが集塵できていない事も考えられるのです

2004 April

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