集塵機の測定?! どうも手におえない大事になってしまうような気がしていたのですが、やってみると難度での点でも、費用の点でもでも考えていたほど困難ではありませんでした。 圧力計はオークションで安価に手に入り、ピトー管も自作。測定してみるといろいろ集塵の謎が解けるかもしれません・・・ |
ダクトに中心にピトー管をセットし、2本のチューブで差圧計に接続して測定しますが、計測用のものは当然高価、でインターネットを検索すると幸運にもピトー管を自作されている方がおられました。http://www.terra.dti.ne.jp/~shin-g/ shin-gさんはバイクのチューンアップのためにフローベンチを作成されていますが、HPを拝見して、圧力、消音など気体流を扱うという意味では集塵とも関係があってちょっと驚きました。また圧力測定は突っ込んだ実験をされていますので、とても参考になります。
早速shin-gさんに問い合わせしたところ、丁寧にも製作図面を送っていただくことが出来ました。おかげさまで、早速、悩むことなく画像のものを製作できました。私の作りが雑ですから当然誤差は大きいとは思いますが、集塵のメカニズムの理解のためには役にたちそう。
ピトー管が出来たのでいよいよサイクロン集塵機のダクトにセットして測定です。ピトー管の設置場所は、気流が安定しているサイクロンのインレットから直径の1.5倍以上離してハイブリッドダクトの側壁に穴をあけ、差し込みました。仮テストなのでシールのゴム板を手で押さえて測定しました(笑)。
上左は静圧(SP)測定で、ダクト開口をふさぎ差圧計の+側は開放(大気圧)しています。結果は1.07KPa、ブロアのカタログ値は約1.4KPaですのでサイクロンの原理上のロス、ブロアのアウトレットのエルボ、空気の漏れなどでこの圧力ロスが発生しているものと思われます。
上右はピトー管の2本のチューブを差圧計に接続しての測定。
@ ダクト切り替え器までの長さ約6m(ハイブリッド角管 1.8m+空調蛇腹ダクト100φ 1.7m+100φフレキシホース 2.5m)
・・・ 0.10Kpa
A @に100φ フレキシホース5mを接続 ・・・ 0.07Kpa
B @にリデューサー、50φフレキシホース 3mを接続 ・・・ 0.025KPa(0.02と0.03の交互表示)
となりました。A、Bは数値が小さく誤差が大きい。
ごく大雑把な概算として、流速Uは Δhが測定した差圧(Pa)
U = 1.3 √Δh m/s
@では
U = 1.3 × √100 = 13m/s
Aでは
U = 1.3 × √70 = 11m/s
Bでは
U = 1.3 × √25 = 6.5m/s
流量 Qは
Q = 流速 × ダクト面積 × 60 m^3/min
同じく@では
Q = 13 × (5×5×3.14)/100000 × 60 = 6.1m^3/min
Aでは
Q = 11 × (5×5×3.14)/100000 × 60 = 5.2m^3/min
Bでは
Q = 6.5 × (2.5×2.5×3.14)/100000 × 60 = 0.77m^3/min
となりました。
ピトー管係数、温度、気圧などの影響を無視していますので精度は???ですが、ダクト(ホース)の長さ、径の影響ははっきりと出ていて、特に細いホースでは短くても激減しています。1HP、100φのダクト(ホース)程度では集塵能力を低下させないために、極力短く接続したほうがいいような感じがします?
なお、オムロンの差圧計E8Y-A5Yは中古ですが問題なく動作し、トータルの費用は約3000円でした。
なお、今日金属屑を集塵して、空調ダクト用の蛇腹管は空気抵抗が大きい上に、傾斜/曲がり部分で重いダストが引っかかりやすく、なるべく使用しないほうがいいように感じました。
2004 March
2004 March
shin-gさんのご許可がいただけましたので、送っていただき、製作したピトー管のスケッチを掲載します。shin-gさん、有難うございました。
銅パイプは肉厚が0.5ミリ、外径が2、3、4ミリのものです。お互いの外径、内径がぎりぎりで、カットした際のめくれで入らなくなってしまったので、切断面を紙やすりで根気よく磨いてめくれをとりました。普通のヤスリは逆効果です。先端部は角をすこし丸めました。差圧計への導入チューブですが、差圧計側が4.5ミリでしたので、内径4ミリ、外径6ミリのものを使用し、図面右のチューブ接続部はパイプをもう1段重ねて4ミリとしています。出来上がったら30ミリ程度のパイプに押し当ててL字型に曲げました。チューブのクランプなども含めて材料は東急ハンズで購入しました。
(註)デジタル差圧計でなくても、チューブをU字に曲げてスケールに沿って板にでも貼り付け水を入れて液面の差を読んで計算すれば簡易マノメーターになり、とりあえずの実験は出来ると思います。なお測定前に集塵機を動作させ、よく各部をはたいて、残ったダストでピトー管が詰まったりしないようにします。
2004 March
プロ用の風速計を借用できましたので、自作ピトー管測定器の校正も兼ねて測定しました。日本科学工業(株)のアネモマスター風速計 6071です。定温度型熱式風速計とあり、センサーにヒーターが組み込まれ、風で冷やされる分ヒーターの電流を増加させて一定温度に保ち、そのときの電流変化から風速を求める方式のようです。またセンサーは360度感度変化が無く、測定誤差が少なくなっています。
圧力損失をなるべく減らすべくサイクロンのドラムを改造したので、この際問題がありそうな空調用のアルミ蛇腹も取り去ってしまいました。まずハイブリッド・ダクト(100φ相当 1.8m)のみで測定です。
風速はU=15.5m/sで、風量換算では
Q = 15.5×0.05×0.05×π×60 = 7.3立方m/min(262CFM)
一方自作ピトー管では、差圧は0.15KPaで 概算で風速Uは
U = 1.3×√150 = 15.9m/s
で多めですが、プロの測定器とは5%以内の誤差で、アマチュア的には
十分使えそうでホッとしました。また改造・ダクト変更の結果
13m/s --> 15.9m/s
6.1立方m/min(219CFM) --> 7.3立方m/min (262CFM))
と能力が2割弱アップしました(但し、自作測定器での比較)。
十分余裕のあるブロア、集塵機ではラフでもいいのですが、ぎりぎり
あるいは能力不足が予想される場合は、細かい積み重ねが必要?
この7.3立方m/min (262CFM)という風量ですが、アメリカのWEBなどでは400CFM以上が目標値になっていて、この風量では評価はpoorです(これはブロア単体の値ではありません!ダクト、ホース、集塵ポートなど全て接続し圧力損失がある状態での値)。実用上不安があるので実際に電動工具の中ではもっともダストが多いと思われる自動カンナでテストしました。圧力損失は100φのフレキシブル・ホース 5m、ダクト切り替え器、自作ダストフード分が増え、メイン・ダクトの風速は12m/s、風量換算では5.64立方m/min(203CFM)です。
約300mm幅の木材を0.5ミリほど切削しました。ダクト内、ダストの分離は全く問題なく、下が切削後のテーブルの画像で、削り終わりに下左のフィード側にほんのわずか残りますが、これが切削終了時に出てしまうのは構造上仕方が無いもの?で、テイク側はきれいですから、この程度の風量でもアマチュア的には使える! という印象です。
引き続き、ブロア(リョービBL-3500)の場合です。
インレット・アウトレット50φ共に開放では風速は26.1m/s、したがって流量は3.1立方m/min(113CFM)で、カタログ値よりやや少なめなのはフランジや継手があるからでしょう。これに消音器をつけると24.5m/sですから2.94立方m/min(106CFM)で、大きな消音効果がありますが、圧力損失は少なく大成功と言えると思います。
これに50φ 5mのフレキシホースを接続すると23.0m/s、2.76立方m/min(99CFM)でした。先に製作した各手持ち電動工具のポートに接続するとそれぞれ
ジグソー 16.3m/s 2.0立方m/min(70CFM)
ランダム・オービタル・サンダー 12.0m/s 1.4立方m/min(52CFM)
ベルト・サンダー 13.3m/s 1.6立方m/min(57.CFM)
スライド丸鋸 15.1m/s 1.8立方m/min(65CFM)
となりました。
ランダム・オービタル・サンダー、ベルト・サンダーは集塵ポート内部の構造が複雑で、圧力ロスが大きいのではないかと思います。
(画像再掲)
最後のスライド丸鋸ですが、サイクロン集塵機からポート直前でリデューサーで100φ-->50(38)φに変換・接続した場合は
スライド丸鋸 11.3m/s 5.3立方m/min(191CFM)
となり、見た目でははっきりしませんでしたがこちらの方がずっと集塵力は上です。このことから、固定機械はポートの口径が小さくても、小口径の集塵機を接続するより、直前で緩やかなリデューサーで径変換し直接ポートに接続した方が集塵能力は大きいといえるようです。
これでやっともろもろのもやもやが吹っ飛びました(笑)
(註)測定値は全てインレット付近(径の約1.5〜2倍離れた)での値です。集塵ポート付近でのおおよその風速は、風速=風量/ダクト(ホース、ポート)断面積の逆算で求めることが出来ます。
2004 March