木工機械の不条理!?

 オーバーなタイトルですが

不条理 その1
「個人輸入した機械のモーターは60Hz、富士川以東の50Hz地域で使用すると能力が約20%低下します。特に集塵ブロアではいくら配管に工夫をしてもこの低下分をリカバーするのは難しく、何かをしているような気分がする」

 世の中エアコン、冷蔵庫、洗濯機・・・と身近な電気製品はインバーターを使用して効率をあげ、省エネしているのに(専用ICは氾濫している?)・・・ 50->60Hz変換する工業用の製品はありますが、容量が大きすぎ、図体も大きく、価格も木工機械が数台買えそう。

不条理 その2
「木工機械の安全に十分配慮された製品が少ない」

 もとより自己責任ではありますが、作業慣れしたプロでも怪我をしてしまうことがあるのに、それを慣れないアマチュアが扱っているのです。 そのために少々コストが上がってしまっても安全を「ウリ」にするメーカーがあってもいいのではないか!? 

 といいつつ、既にあるものは解決を考えざるをえないので悩んでおります(笑)

木工機に機械的なブレーキを追加したり、インバータ等を使用しないで誘導モーターに電気的にブレーキをかけられれば比較的簡単に対策出来るのですが、国内にも市販品があります。






  オーム電機(株)のOBブレーキ、およびOBJブレーキで
 三相誘導モーターの電源回路に挿入、回転センサーと
 組み合わせて制動するものです。
  単相モーターには使用できないと書かれていて、
 画像を見た感じからして高価そうです。
 制動時間は0.5秒など高性能のようです。




 制動原理が同じかどうか不明ですが、AMBI−TECHというメーカーからも電気ブレーキは発売されており、外付けユニットの他、機器組み込み可能な単相モーター用もあるのです!これはPowermaticの大型シェーパーなどに最初から組み込まれているようです。


  「しめた!(笑)」と思い200V 2HP単相用の見積もりを取ったところ$760という返事が返ってきました。
モーターの起動時間のおおよそ半分で制動が出来るということですが、これじゃちょっと手を出せないなあ・・・

と思っていたら下画像の製品


  単相1HPモーターのシェーパーで
 AMBI−TECHのBrakePakがついているようです?
 重量は195ポンドほどあり、しっかりした鋳鉄テーブルの
 ように見えますが・・・
  あったらいいな(My Wish Lists)で紹介した
 アメリカ日立のルーターにもびっくりしましたが
 これにもびっくり仰天!!!!!!!
  たったの約$310です。数字の桁を間違えたのかと
 目を何回も擦りました(笑)
 
  モーターが120V/1HPと200V/2HPにせよ
 片や単体、片や機械込み、これどうなってんのか・・・・
  どえらい不条理だなあ。




 不条理 その1は解決の糸口がつかめ(たような気がしている? 笑)、パーツを集め終わり、実際に実験に入ります。不条理 その2は不条理 その1から解決の方法が見つかるかもしれません。
 どなたか モーター、インバーターに詳しい方がいらっしゃいましたら是非お助けお願いします!

*メールは左下の頭に"e"をつけてお願いします。

2005 Dec.


単相誘導モーターの直流注入ブレーキ(1)

 先日オーム電機(株)のOBブレーキ、およびOBJブレーキ、そしてAMBI−TECHのブレーキ・パックを紹介しました。
これらはインバーターなしで、モーターの巻線に直流を流し電気的にブレーキをかけようとするものですが、検索してみると他にもいろいろなメーカーが製造・販売しているようです。レトロ・フィットというのかインバータや電子制御されていない単純な作りの機械にこうしたブレーキを付加するケースが多いからでしょうか? 
http://www.thiim.com/el/ftp/emba.pdf#search='DC%20injection%20brake'
http://www.grossautomation.com/abb/pdf/AC1006.4.pdf#search='DC%20injection%20brake'
http://www.motortronics.com/pdf2/abc501000a.pdf#search='DC%20injection%20brake'
http://www.emcoinfo.com/products.asp
http://www.dold.co.uk/products/mcp/brakerelayscat.htm
http://www.softacsys.com/digi_brake.htm
http://www.moderndrives.co.uk/braking-systems.html
http://www.thiim.com/el/ftp/emba.pdf#search='DC%20injection%20brake'
http://www.ab.com/support/abdrives/other/1336s/3025.pdf#search='DC%20injection%20brake'
ちょっと検索しただけで芋蔓式にこんなに見つかるのに、国内でほとんど見当たらないのは、インバーターがあらかじめ組み込まれていたり、FA化されているため? それとも安全に対する考えの違いか?

 更に検索するうちに、こんな人を見つけました。(実験は自身の責任でやってください!)
http://www.homemetalshopclub.org/news/sep01/sep01.html
ちょっと乱暴すぎる感じがしないでもありませんが(笑)、車のバッテリーでも可能なようです。卓上グラインダーの空転時間の長さに業を煮やしたのかも・・・。そういえば、市販の直流注入ブレーキ(DC Injection Brake)の中にはトランスが垣間見えるものが結構あり、低圧でやっているような・・・。

 しかしどの程度の直流電流を巻線に流せばいいのか、またそのタイミングと直流印加時間云々は?と不明な点があります。まず国内の関連フォーラムで質問してみましたが、一般的で無いようで(特に単相モーター)、残念ながら実験に踏み切るだけの勇気?を得ることが出来ませんでした。が、世の中には同じことを考える人がいてENG-TIPSというフォーラムで
http://www.eng-tips.com/viewthread.cfm?qid=41614
http://www.eng-tips.com/viewthread.cfm?qid=121724&page=1
http://www.eng-tips.com/viewthread.cfm?qid=36888
大変示唆に富んだQ&Aが見つかりました。

 これらのデータとモーター巻線の直流抵抗(実測で約1.5Ω)から手元にある無線機用の13.8V/20Aの直流安定化電源、電流はブレーキ付インバータの推奨ブレーキ抵抗の値からもこのクラスでは約10Aとあてずっぽうで効果の程を確かめようと思います。

要点は
・モーターのスイッチをオフにし磁界が消滅してから直流を印加する(数100ms後か?)
・理屈ではステーターに流す電流ははじめは小さく、止まる直前は大きくすると効率が良い(モーターのトルク曲線の逆)
・流す電流が大きいほどブレーキ効果は大きい
・パルス波形より安定した直流が良い
・大電流を流すのでモーターが発熱、最悪は巻線が燃える!。ただしここでは市販品のように1秒以下で停止しなくても、現状の停止時間約16秒が数秒になれば大成功と言っていいと思っているので、それほど心配はしていません(笑)
・モーターの回転をセンサーで検出し、停止したら直流印加を停止するのが理想的だが、大体の停止時間をあらかじめ計っておいて、タイマーで切断するようにしても重大な問題点とはならない。(テーブルソーなどに回転センサーを取り付けるほうがよほど危ない??? そして本体を改造しないのもこの方法のウリですから・・・)

そして捕らぬ狸の何とかですが、PICで専用コントローラーを作れるといいのですが・・・


単相誘導モーターの直流注入ブレーキ(2) 大成功!

 JET SuperSawのための直流注入ブレーキ、2日ほどで予想していたより随分早く完成しました。
ずっと悩んでいたのは
・直流をかけた際、コンデンサー・モーターの進相コンデンサーに充電するサージ電流。SuperSawでは100Vで巻線が並列接続の場合は100μF、200Vでは直列接続で25μFになるので、200V電源の方が少し気が休まる? (この容量も50Hzでは要検討事項)
・30Aの電流に安心して使用できるリレーが見つからない。電磁石で引き付ける側の接点では25Aでも、スプリングで引っ張る側は8Aしか取れなかったりで結局、オムロンのG7Lという30A、200Vでは2HPまで使用できるミニ電磁接触器のようなリレーにしました。ただし2A接点といってオン接点(メーク接点)しかないので回路的に工夫が必要になりました。これは@1100円と結構安い!?

*蛇足ですが、スイッチ、リレー等の接点電流規格を見て、工具の電流より大きいからと単純に考えてはいけません。規格は白熱電灯のような抵抗負荷の場合であって、モーターのような誘導負荷では規格の半分程度の電流で使用したほうが安全です。

 実験中の様子です。直流電源は無線機用の13.8V、30Aの定電圧スイッチング。全体は後で何か箱にでも入れるのでコンパネの切れ端に組み立てました。リレーがそういうことで、制御はPICを使用してコントローラーを作らざるを得なくなりました。

基板の様子。青い数字が書いてあるスイッチは左が直流印加時間を約1秒ステップで、右はブレーキ電流を約1Aステップで設定するためのもの。黄・赤のLEDはリレーと連動する動作モニタで、黄色は200V遮断、赤は直流印加に対応しています。

 

 この装置はSuperSawの電源スイッチとモーターの間に入れていて、これまでと全く同じく本体のスイッチだけで操作するので意識する必要はありません。シーケンスは
1.SuperSawの電源スイッチをオンすると、200Vのパワーリレーが動作してモーターが回転し切断作業、電源スイッチをオフにするとコントローラーが検出。
2.約500ms待って「間違っても絶対200Vのパワー・リレーが動作して直流とぶつからないよう」200Vパワー・リレーの電源接続を別のリレーで遮断。
3.リレーの動作時間は大きいものでは50msほどかかかるようなので、約100ms待ってブレーキ用の12Vのパワー・リレーをオンにしモーターの巻線に直流を印加。タイマーがスタート。
4。スイッチで設定した秒数が経過すると12Vパワー・リレーがオフになり、直流を遮断。これから約100ms待って先に遮断していた200Vパワー・リレーを電源側と接続。
5.これで再び1からスタートできる状態になります。
 下画像左はブレーキ動作時の直流電流、そして
    ♪♪♪♪  効果は劇的! ♪♪♪♪
  

 中央は以前の状態で、電源オフから完全停止まで約16秒かかっていたものが、直流注入ブレーキで3秒以下になってしまいました(タイマーも約3秒に設定、画像の設定は2秒)。ブレーキ動作時に機械式のような異音やショックは全く無く、するするっと止まる感じですし、直流を切った際の変な動きもありませんでした
 数十回オン・オフを繰り返してからモーターに触れてみましたが発熱は感じられず、この点からもいい結果となりました。もっともずっと短時間で停止させようとして大電流を流すと(メーカー製はモーター定格の2〜3倍の電流を流して1秒以下で停止させているようです)問題になってきそうです。
 制動電流設定機能はたまたまモーターの巻線抵抗と直流電源の相性が良かったためか、一発で片付いてしまったので宝の持ち腐れとなりました(笑)。費用は約5000円、直流電源は木工機のモーターの定格によって変わり、また100V用ではもっと電流が必要になるでしょう。PIC基板の傍を200V10A程度の電流が流れるのですが、心配した誘導やノイズによるトラブルもありませんでした。

 ブレーキ作動中に再びスイッチを入れることを考慮して、直流印加、タイマーを中断するようにしてみましたが、SuperSawのスイッチのチャタリングが大きくて動作が不安定になりました(注1)。この程度の短時間でとまるので、「ほとんど必要ないか?」と止めてしまいましたが、冷静に考えてスイッチを交換するか、プログラムで解決するか宿題となりました。
 手軽に出来る直流注入ブレーキ、安全の面ばかりでなく、待ち時間も減少しいいことずくめのようです。最後になりましたが、youさんをはじめいろいろ情報を提供いただいたり、相談に乗ってくださった方々にお礼申し上げます。

2006 Jan.


(注1) プログラムの一部変更で、安定に動作するようになりました。

 三相インバータのブレーキもyouさんが掲示板に書かれているように、同じ原理でやっているようです。ただし内部の280V程度の直流高圧なので、モーターの大きさによって数十オームのブレーキ抵抗を入れて電流を制限しています。専門家には周知の事でしたでしょうが、単相だけ見捨てられていたような気分!?

単相誘導モーターの直流注入ブレーキ(3) 完成型



  無線機用の電源を占有してしまうのももったいないので、
 制御部分が壊れていた電源のトランス・整流回路部分だけ
 (平滑コンデンサーは20000μF)を使用してみました。
 ケースの中にはお誂え向きに空きスペースがあり、
 うまく組み込めました。

  トランスは10-12-14-16V 20Aのもの。
 定電圧化されていないので、12Vタップでは無負荷時は約16V、
 ブレーキ作動時は約12V(制動電流は約9A)、リップルもあります。



 タップを変えて電圧を12〜16V、、電流は9〜12Aと変えてみましたが、 停止時間は約0.5秒ほどしか変わらないので、電流が少なくモーター巻線に一番やさしい12Vタップで使用することにしました(制動時間は約3秒)。またこうしておけば冷却のための間歇使用なども考えずに済ませそうです。

 下はパネルの様子、プラケースの中にターミナルを取り付けて左からSuperSawのモーター、同電源スイッチへ接続。一番右は200Vの大元の開閉器をオンにした時に、100V電源のこのブレーキ装置も同時にオンになるよう組み込んだリレー用です。
 

 SuperSawの足元に転がしていますが、大変快適です。

2006 Feb.