LEIGH SUPER FMT (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)
木工ビギナーの知り合いからハイスツールを製作したいという相談があった。ホゾなしでは実用にならないが、かといって手加工は一朝一夕には難しい。そこでルーターで比較的簡単にホゾ加工が出来るというLEIGHTのFMTを試すことにした。
アルミダイキャストのFMT Pro とスチール板のSuper FMT があり、価格は倍違う。ユーザーレビューを検索してみると、クランプの使い勝手、天板の強度などについて書かれていたが、致命的な問題ではなさそうなので安いほうのSuper
FMTを選択した。
本体、アクセサリーのセットはHighlandwoodworkingが最も安く、バンドソーのブレードも入手したかったので好都合。オーダーすると送料の連絡があったが
FedExのEconomyで$184、他にもっと安い方法はないかと相談するとUSPSのPriority Mailでは$163。以前の経験で12月のオーダーで郵便は一月近くかかったので敬遠して、FedExに決めた。
オーダーが発送されて、メールでトラッキングナンバーの連絡があったが、翌日クレジットのREFUNDで$34が返還されて、送料は$150になった。パッケージは重量が32.0lbs(14.5Kg)。
受け取った外箱をあけてみるとSuper FMTのパッケージが一度開封され、その中にオプションのパーツが入れられていた。
普通は販売店が製品のパッケージを開封することは無く(変なものを入れたと税関に疑われる?)、全てがそのまま入るような外箱に入れてくるので箱が大きくなり、厚い段ボール箱の重量も馬鹿にならない。相談に対して少しでも送料を安くなるよう努力してくれた?ようだ。
以上、相談をしてみるものだという経験談だった。最近香港から無線関係を個人輸入したが、こちらは商品の箱を防水紙で包み紐をかけた状態でEMSで送られてきたが送料は安い、壊れやすいものはまずいがこういう選択肢があってもいいような気がする。使用談は後日。
(2) 準備
本体を600×150×25mmのベース板に取り付け、そしてプランジルーターをサブベースに固定する。ルーターはいまや古典的なポーターケーブルの693で、黒いプラスチックは取り外し裏側から直接ねじ止めする。各社のルーターに対応した取り付け方法が準備されているので容易に取り付けられるだろう。ねじを締め付ける前にルーター軸をセンターに取り付けるためのプラスチックジグが付属しているので、これがサブベースの中央穴にスムースに入るよう位置を調整してから固定する。左がコレット径1/4&1/2 インチ用、右は8/12mm用。
サブベースの両脇に見えている真鍮の特殊ねじがガイドピンで、先端がテーパー状になっている。上の調整でこれらガイドピンと切削ビットの軸センターが一直線にセットされた(はず)。またこれの突き出しを変えることでテンプレートにセットした時のサブベースの動き( 遊び)を変えて切削幅を微調し、ホゾのはまり具合を調整するようになっている。
右上はサブベースを上から見た画像。ルーターベースの四隅の黒い長円形のプラスチックはロッドホールを使用してルーターを固定した際にぐらつかないようにするものだが、気休めで取り付けた。
プランジルーターの切削深さを決めるストッパーとインジケーターが見つからないので10φの鉄棒とジュラルミン板の端切れを加工して作成した。
本体は組み立てられていて特にやることは無いはずだが・・・。
左はガイドにテンプレートをセットしたところと、右側のガイド。
そして材料に罫書いたセンター線をあわせるためのセッティングジグ。個人の癖で視差があるのでそれを微調する機能がある。
購入前のFMT Proとの比較で致命的な欠点は無いのではと書いたが、鉄板を曲げた筐体は問題があるかもしれないとは予想していた。
材料を固定する前面のパネルは切削角度を変えることが出来るようステーをつまみで固定するようになっている。また右画像のようにパネルを一番押し込んだときは天板と直角になるよう右画像のように止めねじがある。出荷時に調整されているはずだが下画像のようにぜんぜん合っていない。
たぶん調整すれば済むこと?だが・・・。
続いて加工前に材料をセットする作業。テノン加工を例に考えると基本的に四つの事をやらないといけない。
@下画像の黒いレバーで材料を垂直に固定するためのサイドストッパーを正しく垂直にセット。
A@と同時に材料の上面で、左右方向にセンターガイドジグとセンター合わせ。
Bクランプで固定、クランプにはマグネットがあって緩めてもぐらつかないのはいい。
C前後方向のセンターガイドジクとのセンター合わせ(全体画像で後方の二つのノブ)
特に@Aを同時にやるのは簡単ではない。またセンターセットジグにはマグネットがついているが、力が弱く簡単に浮き上がってしまう。加工精度は切削時だけではなく、罫書きからこのセットにもかかっている。これは改造するか追加ジグ/パーツを考えないと使いづらい。下は集塵ホースの接続。これも材料の前面(手前側)を切削する瞬間は約に立たないだろう。
こうした事からLEIGHに対する印象が変わった。Dovetail JigのD1600はフィンガーの固定、フィンガーバーの強度など問題があったが全体としてはまあまあだった。しかしこのSuper
FMTは確かにいろんなサイズ、形状のホゾをシステマチックに加工するシステムとしてはいいかもしれないが、原理は中学生の数学で理解できる簡単なもの、一番大事とも言える調整もしていない、実際の作業時の不便さ、アマチュア的とも思える作りから考えて高すぎる価格。
フライス盤が使える人には自作がお勧め。
Super FMTをオーダーするちょっと前にDovtail Jig D1600を使用したが、フィンガー固定用のスクリュードライバー(先端が四角)が行方不明(間に合わせにドライバーの先端をグラインダーで削って使用)、ずっと以前使い始めたころ誤ってビットをあて削れてしまったフィンガーがあるのでこれらスペアパーツを入手しようと思った。
まずLEIGHのカスタマーサービスにメールすると、代理店システムなので国内のオフコーポレーションを紹介してきた。早速コンタクトすると入手可能だが船便とまとめて輸入するため手元に届くまで2〜3ケ月かかるという。頼まれものがあり年明けには作業をするつもりなので、急いでいることを再度LEIGHにメールすると、LEIGHからオフコーポレーションに「ユーザーがこういっているが直接販売していいか?」と問い合わせがあったようだ。今回は申し訳ないが急ぐのでとオフコーポレーションと話して、LEIGHに返答していただいたようだが、その後連絡が無く、こちらからメールを出しても黙殺?!
誰かのWEBでLEIGHは販売は代理店経由だけという話を見たような気はする。そこでアメリカの代理店である通販ショップに問い合わせた。
Woodcraft・・・購入はここからだが、LEIGHに連絡してくれという的外れな返事
Rockler・・・回答なし
HighlandWoodworking・・・パーツの価格、納期の連絡があった。バックオーダーに約20日、輸送時間を入れても一月かからないのでここにオーダーした。
担当者にもよるかもしれないが、通常のオーダーに対してはだけはレスポンスが早いが、面倒な事になるととたんに対応が悪くなるショップが多い中、Highlandwoodworkingはきちんと対応してくれた。同店はたとえ大メーカーであろうと、よくないと判断した製品は販売しないというポリシーもあるようだ。
オフコーポレーションには大変お手数をおかけしてしまい、申し訳なかったと思っています。
こういうLEIGHの対応、Super FMTの感想からもこのメーカーは割り引いて評価したほうが妥当なようだ。
年末でなかなか加工まで進めない。(2)で天板部分と垂直パネルが直角になっていないことが分かった。下左画像で二本の黒いビスがストッパーでお粗末な構造、そして右側には無い。またこのビスは垂直パネルの上からはドライバーがアクセスできないので、天板をはずし垂直パネルを持ち上げて調整し、再び天板をセットして確認という面倒な調整が必要。
でこのビスを押し込んでみたが、垂直パネルと隙間が出来るほどにしても直角にならない。
各部の当たり具合をチェックしていると理由が判明した。垂直パネルの曲げ部分と、ダストポート(Vacumm Box)の下の部分がぶつかっている。手でダストポートの下板を曲げてようやく楽に垂直になるようになった。このVacumm
Boxの定価が$59というからもうぼったくりみたいなものだ。
SuperFMTのようなジグは、手工具やテーブルソーでホゾの加工に慣れていない人が主に使うだろうと思われ、特に細かい調整や細心のテクニックが必要では存在価値が薄れる。
WEBでユーザーレビューを見ていて、「天板( サブース)が鉄板で、切削時にルーターを押し付けるとたわんでしまい、正確なテノンが加工出来ない」というものがあった。これは商品選択の時点から気になる点だったので、確認してみた。鉄板の厚みは2.87mm。
まずルーター/サフベースを載せない状態でダイアルゲージをセット。そしてルーター/サフベースを載せた状態では約0.2mmのたわみである。
プランジレバーを引いてストッパーに当たるまで下げて静止した状態(力を入れているので画像がぼやけた)では約0.4mmのたわみで、ストッパーに当たった瞬間やそのまま上から押さえつけると1mm近くのたわみとなった。体格のいいアメリカ人が加工時に力をこめればレビューにあったようなことになりかねない。これは予想したとおりだった。
1mmも切削深さが狂ってしまうのでは使い物にならないので、まず材料からビットをはずした状態でストッパーまでプランジを下げ、あまり力を入れすぎないよう押さえながら切削すればアマチュア的にはまあそこそこの結果になるのではと考えられる。
メーカーはDurableと謳っているが、さてこの結果はどう?!
(6)材料のセッティング(テノン加工)
ようやく天板と垂直パネルが直角になった。
普通のテノンの場合天板と材料が横方向にも直角になるようにするが、Super FMTの垂直ストッパの構造は、横幅約35mmの板の下部に突起と調整ねじがあり、垂直パネルの下側に当ててセットするようになっている。しかし横幅が狭く点で接触するので不安定でクランプを締める際にぐらつくので、材料のセンター線を合わせながら同時にこの垂直ストッパもセットするのはトリッキーだ。
センター線を罫書いた材料を、プラスチックの三角定規を使用してセットすると比較的容易に、また正確にセットできた。
材料をクランプする前に三角定規をまずクランプして、その後材料をクランプ、そして垂直ストッパをセットするという順番。
クランプが足りないので、手持ちのJorgensenのホールドダウンクランプ(カムクランプ)、BESSEYのLUMクランプも使用してしっかり固定し加工前のセッティグが終了。
Super FMTの垂直ストッパは角度つきのテノンも想定したため、不正確、中途半端なものなので実用的でない。またこの状態では切削時に三角定規の直角部分が削られてしまうので、ベニヤ板などでL字型のセッティグ定規を作ってこちらを使用し、もともとの垂直ストッパは補助的に使う。また転びなど角度つきのテノンはその角度のセッティング定規を作ればいい。さらにこの定規にはレアメタルの磁石を埋め込んで垂直パネルに張り付くようにしておくともっといいだろう。
28×24mmのナラの角材で二枚ホゾの加工をしてみた。ホゾのサイズは1/4"×5/8"、ルータービットは初めて使う新品。
材料をセット、そしてセンター合わせ。ガイドは1/4"×5/8"用。
まずホゾ穴、ガイドピンは一番タイトな状態にしているが手でルーターを操作するので切削幅のばらつき、また天板などの強度不足から深さもばらつきが出ている。
つづいてテノン加工のため材料をセットしようとすると開口部の中央付近で、この材料のサイズでは隙間が出来てしまう。材料を左右どちらかに寄せてセットしないと役に立たない。
テノンは下の画像のように、天板の強度不足か胴付の不揃い(プランジのレバーロックが原因の可能性もある)、そして肩のチップがちぎれている。
また中央部を切削するときには不用意に動かすと他方のテノン部分まで切削してしまうおそれもある。
はまり具合は硬めでゴムハンマーで軽くたたいたが、画像のように少し浮き上がってしまった。ホゾ穴は約11mmに対してテノンは12mm強ある。
理由はいまのところ不明。道具によって「くせ」があるのは仕方ないが、普通に加工していてこんな不具合が出るのはどうなっているのか?
また予想したとおり、クリーナーで集塵してもこの程度の切削で足元はダストだらけになり、ほとんど用を成していない。
簡単なテスト結果だが、
1.天板の強度、天板と垂直パネルの直角、垂直ストッパーなど基本的な構成するパーツの出来が悪い。
2.材料をセットする工夫がぜんぜん足りない。
3.材料をクランプしにくい。付属のものはジョーが短くまた、開けられている穴では材料の角になってしまったりする。そもそもクランプの数も足りない。
したがって複数の材料を交換するのも面倒。
4..オプションの集塵ポートは気休めにしかならない。
実用的に使うためにはテクニックと慣れ、そして追加のジグなどが必要。デモンストレーターのようにかなり使い慣れるまではいろいろ不具合があるだろう。
評価は5点満点で1.5、価格が$200以下なら3.5といったところか・・・。
(8) 材料のセット用ジグ
コンパネで材料セット用ジグを作った。普通の垂直用と6/100の転び用。φ12*3mmのネオジウム磁石をわずかに沈むようエポキシ接着剤で取り付けた。
手でサポートしなくてもずり落ちないのでクランプは不要、両手が使えるので作業性は抜群。
角材だけではなく、丸棒も加工可能でその場合はブロックを使用してクランプする。またこのジクで天板と垂直パネルの角度をセットすれば同じ角度の四方転びのセットとなる。