集塵の特性測定(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)


 日本化学工業(現 日本カノマックス株式会社)の定温度型熱式風速計 6071を借用できたので大雑把に風速を測定。

一般に熱式風速計と呼ばれているのは現在ほとんどがこの定温度型熱式風速計である.これは風の冷却作用による放散熱量に対し,同じだけ風速素子に熱量を供給するもので,放散熱量と供給熱量は常に平衡状態にある.従って,風速素子の温度は常に一定に保たれる.風速はこの供給する熱量を測定することにより知ることができる.(同社サイトより)

  

 まずサイクロン集塵機単体。設置済みのダクトを取り外すのは面倒なので、5ケ所のブラストゲートを開放、風は分散されるがそれぞれ数箇所の分岐、エルボーがあったり、先端はΦ100のホースが数メートル接続されているので、Φ150/1m長の直管をインレットに直接接続して測定した場合より低く出る。

 中央画像の測定位置は前後に45度のエルボーがあり、直線区間も短いので乱流の影響を受けるが、風速は21.4m/s 従って風量は22.7㎥/min 、CFMに換算すると約815CFM。以前使用したものの倍以上の風量はあるらしい。
パティオに面した1800W*2200Hの掃き出し窓を開:けていたが網戸は閉めてあり、ホール側へのドアを開ける際に負圧を感じた。この大きさの網戸ですらも圧力ロスの原因となる。

 次にメインダクトからリデューサーでΦ100に変換し自動カンナに接続しているΦ100フレキシブル・ホース(約1.5m長)の直線部分(右画像)に穴を開け、ここで測定。
風速は25.1m/s 風量は 約11.8㎥/min / 約425CFM
試しに上部パネルを取り外しダストフードを開放状態にすると約10%風量が増加した。一つ一つの事がドンドン響いている。

自動カンナで風量が半減してしまうのはダクトの長さやエルボーの影響よりも、Φ100のフレキシブルホースが主原因。

 このことはBill Pentzさんのホームページでも、6"のメインダクトで800CFM風量があっても、接続するダクトが5"では556CFM、4"にすると356CFMになってしまった例がある。

 自動カンナの場合チップの集塵だけならこれでもよさそうだが、微粉塵を考えるとメインダクトからのドロップを5"~6"とする必要があり、場合よってはダストフードも作る必要がある。またこれは50/60Hz とは別次元。

 静圧が大きいブロアであれば、大風量型のブロアより圧力ロスの影響は受けにくいが、微粉塵を吸引するために必要な風量が得られる高圧ブロアは大型になり価格も高く、一般では手に入れにくい。家庭用クリーナー、バキュームクリーナーは、集塵機に使われているブロアと比較して数倍以上の静圧があり、サイクロンなどラフに作っても高い静圧のおかげで影響を受けにくい。ただし風量が数分の一しかなく機械の集塵には力不足?。

APR. 2010


ルーター・テーブルの集塵

 テーブルソー脇にルーターテーブルを作成して取り付けたが、ルーター・テーブルの下側にダスト飛散を防ぐためダストボックスで囲い、そこに集塵ホースを接続している。その際の予想としてダストボックスの点検扉を閉め切ってしまうと、風量が少なくなりすぎサイクロン内の風速が低下してダスト補足率が悪くなると予想した。


 口径が比較的大きいビットを取り付けた状態の画像だが、明らかに開口面積が少ない。


 今回はダストボックスの扉の開閉具合よって風量(ついてはサイクロン内の風速)がどのように変化するか、風速計のプルーブは自動ブラストゲート下のフレキシブルホースの直線部に穴を開けて差込み測定した。


 






全閉 1/3オープン 2/3オープン 全開
点検扉の状態
風速(m/s) 10.8 25.3 26.3 26.3
風量(㎥/min.) 5.1 11.9 12.4 12.4
風量(CFM) 183 427 446 446

: 点検扉を全閉にしてしまうとビット周りからの空気流入だけになり、吸い込みは良くなるように思えるが風速は半減し、ダストセパレーションは悪化している。1/3以上開いた状態では風量はほとんど変わらず、現状のダクト接続での最大風量となっている。余り開き具合を大きくするとビット周りからの吸引量が減少してしまうので、1/3付近がビット周りからの集塵とダスト・セパーレーションの兼ね合いがいい状態と考えられる。
 またビットのインサート・プレートは作業精度も絡んでくるが、極端に隙間を狭くせずある程度の開口があったほうが集塵の点からは好ましい。

 実際の作業ではテーブル上面にダストは残るが、度々掃除しなければ次にかかれないほどの量ではなく、下側からの集塵だけでも特に大きな支障は感じていない。

(注)高真空ブロアの集塵機では影響はこれより少ない。

APR. 2010


レース/室内換気

 レース上部の集塵の様子。画像すぐ上にΦ150->Φ100のリデューサーがありΦ100部分の長さは他と比較すると1/3以下。フードはそういうことで樽型のフラワーポットで間に合わせている。Swivel Connectorは角度調節と短いホースが増えるのを避けるため。

 余りあちこち穴を開けまくるのもなんなので、メインダクトで測定し、風速14.2m/s、15.1㎥/min、540cfmであった。
 Φ100の区間が短くなった事で約100cfm風量が増加している。リデューサーは機械の直近で径変換するほうがいい結果となる。
 風速が増えても圧力ロスはその二乗で増加するので、場合によっては最悪風量は余り変わらないという結果もありえなくは無いので注意。

 このフードは粉塵対策で、ラフィングの際のチップはとても集塵しきれないが、青いエプロンがあるので機械下や床への飛散は少ない。余り囲い込んでしまうと作業がやりにくくなるのでこの方法にした。







 次は部屋の換気関係。ファンは東芝のシロッコ型中間型ダクトファンDVC-23H使用。普通は天井裏に設置するが機械の配置によって吸入箇所を変えることを考えているのでダクトともども天井に取り付けた。現在吸気口は作業量、頻度、粉塵発生量が多いテーブルソー、ベルトサンダー、レースの上辺りにつけているが、吸気フードは間に合わせにしたダンボール製そのまま(笑)
  特性表   

測定結果は 風速5.0m/s、風量は約5.3㎥/min 、約190cfm。時間当たり約318㎥。カタログの風圧曲線を見ると圧力ロスは約160Paで、Φ150の直線ダクト数十メート以上の圧力ロスとなっている。実際はΦ150スパイラルダクト2.5m+アルミフレキシブルダクト1m+消音ダクト2m+排気フードだが、上右画像の左側のフードで小さくこの風圧ロスが大きいのではないかと考えている。右の集塵機排気用は40cm径ファン用の大きなものにしている。

 部屋の体積は約62㎥、現状の換気能力では机上計算で換気に約12分かかることになる(浮遊している微粉塵は100%排出?)。排気フードをひとまわり大きなものに変えて測定してからいろいろ再検討予定。この換気扇使用時のトータル騒音は強51dB、弱47dB。

 なお各部屋は高気密仕様で空気流入がドアの下隙間だけの場合の風量は5.3㎥/min->4.0㎥/minに減少した。


 当初外壁に取り付けた集塵機用の排気フードは左の換気用と同じ小さいもの(Φ150用)だったが、上画像赤マークのブロアの排気のホースが集塵機を動作させると風圧で伸び上がりまっすぐになろうとした。それだけ排気フードで圧力損失があった。で大きなものに取り替えて現象は無くなった。


全ての測定 

分岐 風速m/s 風量㎥/min 風量cfm 備考 評価
テーブルソー 3 11.9
16.0
12.6
17.0
453
609

ワークベンチ 5 12.6
14.1
13.4
14.9
479
537
手持ち電動工具、ベルトサンダーなど、小フード付
まだドロップダウンを変更していない

ルーターテーブル 3 12.2
13.9
12.9
14.7
463
529
Φ100ホースのみ
   〃        (註)2本の場合クリア

ジョインター 1 14.2
17.3
15.1
18.3
540
659

ブレナー 2 13.2
18.5
14.0
19.6
502
704

バンドソー 2 12.1
18.8
12.8
19.9
460
715

レース 4 14.2
16.7
15.1
17.7
540
636

角のみ/ボール盤 1 14.4 15.3 548 ホース切りっぱなし、BS-10Kと差し替えて使用
BS-10K 1 10.0 10.6 381 金属切断、集塵ポートがΦ50と小さい為
フロアスイーパー 4 12.1 12.8 460

メインダクト分岐は集塵機からの順番。全てΦ150の集塵機近くで測定。空気漏れのため各機械直近のΦ100フレキシブルホースでの測定値とやや異なる結果となっている。 ジョインター、角のみ/ボール盤は最も集塵機に近い。

 今後の改善対象はブレナー、テーブルソー、バンドソー、ワークベンチ(特にサンディング時)。分岐先の集塵ホースを2本に分ける、フレキシブルホースをΦ100からΦ125に変更などで600cfmは可能と見ている。

Φ100ホース部分の改善についてはアイデアがあり、後日実験する。


ダクト革命?


 それほど大げさかどうか? 局所クーラーや、木工用でも販売されている硬質ダクトは径が変えられたがせいぜい±10%程度。しかしこれはすごい!

カナフレックス 硬質ダクトNS という商品名だが

 ・優れた耐熱性を備えています
 ・自由自在に曲げることができます
 ・気密性を損なわず、50%まで伸縮自在です
 ・ダクトの口元をひねるだけで、口径が変化します
 ・切断、取り付けが容易で、配管工事も簡単に行なえます
  (メーカー カタログより)

 ±50%であればΦ150->Φ100変換が出来るし、市販のリデューサーのように「ハイここまで」というような紋切り型の径変換ではなく、緩やかな角度で変換すれば風圧ロスが少ない。Φ125で実験。
 
 左画像はダクトを左回しして径を大きくした部分。おおよそΦ150だが、まだ大きくする余地はあり、それほど力はいらない。続いて径を縮める作業。摩擦のためかなり力が要る。とにかく縮めに縮めるとΦ90まで小さくなったが。先端から十数cmぐらいの部分で、先端は逆にラッパ状に開いてしまった。ひと汗かいたので、休みがてらメーカーに電話して「コツ」を聞いたが特には無いらしい。そこでラッパ状に膨らんだ部分(4ターンぐらい)をほどき、T字状の部分をシリコンオイルをしみこませた布で拭いてから、径が膨らんでいかないように注意しながら組み立てなおした。その結果が右画像。4"のブラストゲートに差し込んでいる。今はくたびれたので取り付ける時にもう少しきれいな形にする。

 Φ150の分岐がまだ届いていないので測定は済んでいないが、メートル当たりの価格は径の大きいフレキシブルホースより安いくらいで、鉄板のリデューサーを含めた費用、風圧ロス共にこちらに軍配が上がる。これから工房に配管する場合は定尺で購入するともっと安い。作業的にはΦ100の径を大きくするほうが楽と思うが、Φ150まで広がるかどうかメーカーは「微妙」と言っていた。またφ100の区間が増えるのでは意味も無い。

 ネット・オークションにも出ているが、通販でもっと安いところがあった。


 風量 50% アップ !!

取り寄せているΦ150の分岐の入荷が来週になってしまったので、仮接続してテスト。

 最終長さが決められないので余分な曲がりが出来ておりロスは多めになっているが、Φ100のホースと比較して
425cfm -> 685cfm
と風量が50%アップ、著しい効果があった。メートル当たりの購入単価は2300円でメタルタイプのリデューサーやΦ125のフレキシブルホースより安く、これを使わない手は無い。


700cfm

朝8時前に分岐が届いていると近所の管工工事業者から電話がかかってきて早速取りに行き、ブレナーとバンドソーにセット。購入した長さは2mでギリギリだったが何とか間に合った。径を縮める方法は先に書いたとおり。

 ブレナーでは 18.5m/s,19.6㎥/min、704cfm、バンドソーでは 18.8m/s、 19.9㎥/min、715cfm。テーブルソー/ルーター・テーブルとワークベンチについては今後検討。

APR. 12 2010


総合測定

 他のドロップダウンを硬質ダクトNSに変更。一部フード取り付けが済んでいないがいつまでも測定器を借りられないので最終測定した。
  
 左からジョインター、レース、テーブルソー/ルーター・テーブルの接続状態。測定結果は「全ての測定」の表に青字で記入。木工機械は全て600cfm以上になり目標をクリアした。
 ルーター・テーブルはΦ100ホース2本で上下から集塵することで、16.9m/s、17.9㎥/min、643cfmとなった。

 今後の課題は、レースの風量が増加して、Φ100の市販ブラストゲートの構造上風騒音がうるさくなったので、ブラストゲート自体をΦ125-150に変更する必要がある。
 また十分な配管分岐スペースが取れずチャンバーを使用したが、ルーターテーブルはチャンバーからのφ100のホースが15センチ足らずにもかかわらずそれほど風量が増加していない。やはり90度分岐はロスが大きいようだ。


レースのドロップダウンの変更


 上の中央画像でドロップダウンをカナフレックス硬質ダクトNSに変更したが、ブラストゲートは市販のΦ100プラスチック製で、風量が増え風騒音がかなりうるさくなった。

 原因はシャッターが抜け落ちないようストッパーの突起があり、完全にオープンしないためだ。騒音が無ければそのまま使うところだが、どうせ変更するならとΦ150のブラストゲートを作った。

 材料は市販のコネクター、塩ビ板、アクリル板でまだ自動化はしていない。カナフレックス硬質ダクトNSはΦ150にしている。
測定結果は20.6m/s、21.8㎥/min、785cfmと機械の中で最大となった。