木夢工房 探訪記

 5月末の日曜日、かねてから楽しみにしていた東京・稲城市の伝統工芸作家 渡辺 晃男さんの木夢工房にお邪魔する事が出来ました。

 入り口を入ってまず目に飛び込んでくるのは整然と並ぶカンナの大群!それだけで違いを思いっきり感じました。
壁には数え切れない端金、パイプ・クランプ、バー・クランプ類がこれまた整然と並んでいます。

 

 昇降盤と集塵の様子。シンプルで安定感は電動工具はこれでなくてはと・・・ 全ての機械の周囲には十分な移動スペースが取られています。

 

 自動カンナとベルトサンダー。自動カンナは送りスピードを可変するため、送りローラーには切削軸とは別のモーターが使われています。インバータで制御して自由に送りスピードが変えられます(早速アイデアいただき 笑)。

 

 そして角のみとバンドソー。角のみはコンプレッサーでダストを吹き飛ばす方法、前後・左右のスライドはやはり便利ですね。それにしてもとにかくみんな大きくて重い!? タバコの箱とブレードを比べてみてください。挽き割りはこれでなくっちゃ!?
 この他大型の手押しカンナ、そして超仕上げカンナ。これはロータリー・ヘッドではなく裏押しのついた直刃で、良く切れる手カンナと同じようにペーパーのような切り子でツルツルに仕上がってました。

  



 伝統工芸展に出品された作品もいくつか見せていただきました。左画像のように作品にあわせて作られた桐の箱に入れられ、布で丁寧に包まれたお宝。これは全面がバーズアイ・メープルの楓木象嵌手箱

 

 





  側面は象嵌が施されています。
 下はそのクローズフアップ。色の濃い縁取りは桜。
  細い象嵌は銀線が使われています。








 下は八角形の黒柿唐草文扇面筒です。桐で内張りされ、断面が八角形の蓋は、ぽんと小気味良く引き抜けます。埋め込まれているのは瑪瑙、トルコ石、夜行貝、まるでシルクロードで発見された古美術品・・・です。右画像は桑を切り出した象嵌の「たね」、・・・と呼ぶそうです。

 

 下左は象牙から切り出して着色したたね、0.8ミリの糸鋸で切り抜き、削りだしたそうです。
右は象嵌の素材で、鹿角、夜行貝,べっ甲など多種ストックされていました。黒柿をはじめ、木の象嵌素材も多数用意されていました。

 

 加工は「たね」をまず作製、穴掘りはそれにあわせて大きいものはルーターで荒堀りし、細かい仕上げは手作業で。下は渡辺さんと作製した刃物類。金のこのブレードを様々な形状に加工して、研磨。どれも気持ちよく研ぎ上げられていました。

  

 接着は膠を使用されるそうです。



 下の画像はよく使われる材料から、そこでしか採れないという高級材 御蔵島の桑です。



 以前、作業内容は機械加工が八割、手加工は二割とお話は伺っていたものの、伝統工芸と大きな木工機械との共存がちょっと不思議に感じられた部分でした。しかしかける時間は逆に機械加工に二割、手作業に八割、作品や手工具を拝見すれば、電動工具だけでは金輪際不可能な「技」に目を奪われ、驚き、感動することしきり・・・・ 数時間の訪問でしたが、お聞きしたかった事はまだまだ山ほどあり、画像、目のつけ方など至らない点が多くて十分お伝えできなかったのではと心配です。

 とはいうものの、至福の時間でありました!

2005 May