50->60Hz 単相周波数変換(1)

 「木工機械の不条理」を受けて対策に乗り出しました?
 
 200V 1.5HP用、IGBT、高圧電解コンデンサー、放熱板などジャンクをかき集めてブロアの1/3ぐらい。後はPICのプログラムにかかっています(笑)。


50->60Hz 単相周波数変換(2)


 左はPWMを作るPIC基板、右は約1/4周期の波形です。まだ追い込みが必要なようですが、この部分の目処がついたので、とりあえず一服といった感じ・・・


50->60Hz 単相周波数変換(3)



  最近しきりに思うことですが、どうもプリント基板上に
 整然とパーツを配置するより、バラックで組み立てるほうが
 性に合っているような気がします(笑)。 昭和34年、
 初めて真空管ラジオを組み立てて以来のことで・・・

  ということで高圧部分の配線が出来上がり、いよいよ
 追い込みです。
  PICコントローラーは、インバーターに必要な機能が
 あらかじめ組み込まれた18F2431に変更しました。
 MICROCHIP DIRECTから購入すると、約$5でこんなに
 安くていいの?

パーツ代です。これで万一うまくいけばめっけもの!?燃えてしまったらとんだお笑い種です(笑)

IGBT(3.7KW級) 1000円
整流ダイオード 380円
電解コンデンサー(容量追加の必要あるかも?) 840円
スナバ・パーツ、ZNR 約1000円
フォト・カプラー/ドライバーIC 4個 1200円
絶縁型DC-DC 3個 1890円
PIC 18F2431 600円
その他パーツ 約2000円
約9000円

50->60Hz 単相周波数変換(4)

  ようやく動き出しました。左は小型モーターでテスト中。
 
 直前に大ちょんぼ(笑)。といっても回路やプログラムではなく、
 単なるケアレス・ミス。完成して接続しフォト・カプラ−
 /ゲート・ドライバーのところでシンクロで位相チェックし、
 そのままで主電源を投入して しまったのです。
  この時シンクロの2個のプルーブのグランド線を通じて
 上アームと下アームが短絡された状態で、IGBT(IPM)の
 OCアラームは動作したとしても役に立たず、トランジスタが
 ショート? 20Aのライン・ブレーカーがとびました。
 このことは十分注意するよう肝に銘じていたつもりだったの
 ですが、やってしまった!?・・・
 幸いIGBT以外にダメージは無く1000円のロスで済んでほっと。

 小型モーターに続き無線用の50Ωのダミーロードを接続、DCバス電圧が275V->255Vと低下するのでやはり平滑コンデンサーの容量を増やす必要があります。電流は約3Aでこの場合は (255×3)/1.4≒550W≒0.7HP V/F制御は電圧利用効率が悪いのでこの8割程度の負荷ということになるのでしょうか。モーターを接続した際のDCバス電流波形が奇妙なのですが、この理由が単相モーター駆動のコツかも・・・ などとバカなことを言っています(笑)


50->60Hz 単相周波数変換(5) 紆余曲折

 DCバスの平滑コンデンサーの容量を増やしたところ、電源投入時の充電ラッシュ・カレントでブレーカーが働くようになってしまいました。そこで直列に抵抗を入れて制限し、充電されたところでこの抵抗をバイパスするパワー・リレーを追加し、PICでコントロールします。その200Vのパワー・リレーのON/OFFのため左下のSSRのキットを使用してみました(ZNRは200V用に変更)。説明書には200Vで使用可能?とあるようですが、一度オンすると電源を切らない限り、サイリスタのようにオンになりっぱなしになってしまいます。素子のばらつきか、200Vでの使用に問題があるのか分りませんが用を成しません。仕方なく右の250V/2AのSSRスイッチに交換、意図どおり動作するようになりました。

 

 下は負荷試験のために用意した発熱体です。常温時の抵抗は約3.8Ωなので電源投入ラッシュ時は
Icool=200V/3.8Ω≒53A  Pcool=(200V)2/3.8Ω≒10,526W

発熱して抵抗値が大きくなった際は、定格が200V 1KWなので
Ihot=1000W/200V=5A 
と定格電流が10Aのモーターと比べると半分の負荷です。一方コンデンサー進相モーター( PSCモーター・・・Permanent Split Capacitor)のラッシュ電流は定格の2〜3倍と言われているようです。、もちろん起動時のラッシュ電流から(定速に回転が上がり)、定格電流に到達するまでの時間の違いはあるのですが、このヒーターの負荷試験に合格すればモーターのラッシュ電流も多分大丈夫だろう?という計算です。IGBTの最大電流は100A(サージは200A/1mS)、なので耐えてくれるのでは・・・ と希望していますが!?(パルスなので・・・)。
 15Wの小型モーターでは、いきなり60Hzでスタートさせた際のラッシュ・カレントは定格の約2倍でした。

<参考資料>
単相インバータ(VFD・・・Variable Frequency AC Drive)資料リンク集(順不同、素人ですので適切でないコメントがあるかも)

@今回の製作の原点となった資料。コンデンサー進相モーターを分解出来るなら理想的な制御が可能。
www.designnewsjapan.com/magazine/2005/04deep.html
AMicroChip社のAplication Note 交流モーター、回転センサ、IGBTのドライブについての解説、PICチップのサンプル・プログラムもあり
http://www.microchip.com/stellent/idcplg?IdcService=SS_GET_PAGE&nodeId=1490&filterID=421
B「たのしくできる 単相インバータの製作と実験」ISBN4-501-10910-6 東京電気大学出版局
国内唯一の本か? 分かりやすいがそっくり真似する場合以外にはやや解説不足。使用パーツは古い。
http://www.tdupress.jp/book_da/ISBN4-501-10910-6.html
CCKTS.com is a design project team at The Citadel, Charleston, SC.
インバータを実際に製作、やや古いパーツを使用したものだが動作原理、テスト結果まで詳細に書かれていて、他の参考資料は要らないくらい。
http://www.citadel.edu/ece/eedesign/cktsdotcom/
D富士電機デバイステクノロジーのパワー・モジュールのデータ・シートとアプリケーション・ノート。スナバ回路、保護回路などかなり精しく解説あり。
http://www.fujielectric.co.jp/fdt/scd/index.html
F単相籠型モーターのモデリング
http://www.mathworks.com/access/helpdesk/help/toolbox/physmod/powersys/singlephaseasynchronousmachine.html#2660569
GSingle Phase Inverter Design
http://www.ece.osu.edu/ems/ee682/SinglePhaseInverterDesign2.pdf#search='SINGLE%20PHASE%20INVERTER'
H三菱電機半導体データシート アプリケーションノート 
http://www.mitsubishichips.com/Japan/common/cfm/eLineUp.cfm?FOLDER=/product/power#
I400V 三相インバータの製作
http://braeg.piranho.com/e_s/3electronic_design/3_1_system_overview.htm
JSwitching Transents of Low Cost Twoo Speed drive for Single Phase Induction Machine
http://www.ece.wisc.edu/~lipo/2000pub/00-23.PDF#search='inverter%20single%20phase'
Kモトローラ M68HC08を使用した単相インバーターのアプリケーション・ノート
http://www.freescale.com/files/microcontrollers/doc/ref_manual/DRM039.pdf#search='single%20phase%20drive'
Lトライアックによる小型単相モーターのスピード制御
http://www.aircareautomation.com/data/article1.pdf#search='motor%20drive%20single%20%20phase'
MSTMicroelectronics社 各種交流モーターのスピード制御方法の説明
http://www.st.com/stonline/products/promlit/pdf/brmotor-0503.pdf#search='motor%20drive%20single%20%20phase'
N東芝セミコンダクター。フォト・カプラ/ドライバーなどのデータ・シート類
http://www.semicon.toshiba.co.jp/index.html
OCQ出版「パワーMOS FET活用の基礎と実際」ISBN4-7898-3038-1 MOS-FETのゲート・ドライブ方法などを参考にした。写真で見る工作室さんに教えていただきました。
http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/30/30381.htm
P鹿の骨さんの「誘導電動機を速度制御する話」 Youさんから教えていただきました。
http://f37.aaa.livedoor.jp/~dende/mo.pdf

50->60Hz 単相周波数変換(5) ひとまず完成!

 
 見るからに暖かそうな画像?ですが、200V/1KWのヒーターでの負荷試験はうまくいきました。その際の電流は右画像のように4.75A。ラッシュ・カレント時に何事も無く、30分ほどの運転でもIGBT、整流ダイオードなどの温度上昇も全くといっていいくらい無く、十分余裕がある感じがしました。
  
 整流回路の電解コンデンサーの容量を追加して計2500μFにしたので、左画像のようにバラックもいいところです(笑)
そしていよいよモーターを接続してのテスト。ジャンクの100/200V切り替え、0.4KW/4Pのモーターですが、事前に200V/50Hzラインに接続して廻わしてみると、始動時と停止時になにやらカチャンと音がします。どうもPSCモーター(進相コンデンサーが常に接続されている一般的なタイプ)では無く、始動時だけコンデンサーを接続し、回転し始めると遠心スイッチでコンデンサーを切り離す「キャパシター・スタート・モーター」というタイプのようです(このタイプは一般的にラッシュ・カレントが大きいようです)。が始動時の状態は多分PSCと変わらないだろうと?適当に決め込んで端子に接続し、恐る恐る周波数変換器をスイッチ・オン。
 「ビィー・ビィー・ビィー」
と音はすれども廻る気配なし、モーターの軸を手で廻そうとすると、ブレーキがかかってロックされたような状態です。そのうち保護回路が動作して停止しました(安心してテストできる 笑)。
「???????????・・・・・・・」
この時周波数設定は最大で65Hzほどになっていました。そこで周波数設定ボリュームを30Hzにして再びスイッチ・オン!
今度はゆっくりと回転を始め、周波数設定ボリュームを上げていくとそれにつれて回転も上がります。シンクロで波形を見ながら40Hz、50Hz、60Hzと確認し更に回転を上げていくと65Hzぐらいで「あれまあ!」最初と同じ状態に!?
 これ、何ですか? ストール状態?進相角が不適当(このサイズにしては250μFと大きい)?

 60Hz以下では問題なく始動し、また15Wのモーターでは支障なかったので、このモーターだけかもしれませんが原因不明。
で、ひとまず完成ということにしておきます。最終的に集塵ブロアに接続して動作確認できれば完成ということになります。


50->60Hz 単相周波数変換(6) 完成だあ!

 
 今回の製作の最終目的は左画像のブロア(Pennstate Industries製 120/240V切替 1.5HP、始動・停止時にカチンと音がするのでキャパシター・スタート・タイプのようです)を電源周波数60Hzで動作させ、本来の性能を出し切ること。いろいろ紆余曲折がありましたがとうとう完成しました。
 高機能PICを使用したことと、周波数変換だけに限定したので右画像のように意外と少ないパーツです。中央縦の黒いICがPIC18F2431、右手の白いパーツがフォト・カプラー/IGBTドライバー、上下の少し大きめの黒いパーツが24V-15VのDC/DCコンバーターです。加速は約3秒で自動ステップ・アップなので(理由は後ほど)昔のオートマ車のギア・チェンジのように少しぎこちない?ところもありますが、50Hz時と比較してホースに手をかざした時、強力に引き込まれそうになってあせるほど風量が増加、ホース先端をふさいでしまっても支障なく、機能的には十二分なものとなりました。この67Hzでは約3割方パワー・アップか?(実測例)
 PWM周波数は15KHzで単純なV/F制御、下左は出力電圧波形で周波数は約67Hz、横棒部分を拡大するとPWM波形列です。モーター電流はホース先端開放で負荷が軽いためか少ないのですが、クランプ・メーターの周波数特性が悪いためかもしれません(これ以前のPWM周波数は8KHz)。

 

 約1時間ほど運転してみましたが、IGBT、整流ダイオード・ブリッジ、スナバ・パーツなど発熱はほんのりとする程度で、また60Hzでのデューティ・サイクルの設定を小さくし、あえてストール状態にして約10A流れても問題はなかったので、もう少し大きなパワーを引き出せそうです。これまでの恐る恐るから、手のひらを返したように一転強気になったりして・・・(笑)

 当初MicroChip社のアプリケーション・ノートを基にプログラムをモデファイしたのですが、連続可変速にするためPWMのタイム・ベースと出力電源周波数のタイム・ベースをそれぞれ別のタイマーで制御しているので、微妙なタイミングの差のため一周期のおしまいのところで一PWM波が前後してしまい、モーターの回転むらがどうしても退治できませんでした。(PICのクロックが20MHzなのも関係あり)
 で、PWMタイム・ベース一本で制御するようにプログラムの大半を変更、そのためスピード可変は30Hz->60Hzを6ステップで自動加速することになりましたが、起動時だけのことなのでこれ以上の追求は止めにしておきます。DSPならスムースな制御が可能でしょう。

 最後の最後になって時間がかかってしまったのはIGBT(Intelligent Power Module)のアラーム信号の扱い方が原因でした。当初IPMのアラーム出力を単純にPICのFAULT入力(割込み)に接続し、一度でもアラーム出力があった場合はPWM出力を遮断し、動作を停止させるようになっていました。そのためパルスのピーク電流で動作してしまい、このブロアに接続してから40Hzより周波数を上げられないという状態が続き、「ついにはお手上げ?」直前(笑)。しかし過去いろいろなパーツを壊した場合と違って、大電力を扱うIGBTは極めて短時間の過電流のストレスには耐えられるようで、保護回路を設定回数のアラーム信号があった場合に動作を停止するようにプログラムを変更し、完成することが出来ました。ただし、FAULT割り込みがあった場合に、該当するPWMピリオドの間PWM出力をPICのハード・ウエアで瞬時に遮断し、次のPWMピリオドでリカバーという機能はそのまま動作しています。
通常の過負荷(過電流)はDCバス電流をカレント・トランスで検出して、パラ(OR)で保護回路に接続しています。
全くノウハウの蓄積がなかったので、専門の方から見たらお笑い種だと思いますが・・・ 昨年末のPIC入門、そして初めてのパワー制御、高電力?パルスでした。




  参考資料の山?。
 上の二冊を除き、インターネットで入手したものばかり





 2006 March